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事前確定届出給与(業績賞与との関係)

役員賞与の支給につき、前期末に計上した役員賞与引当金を取り崩す会計処理をした場合、過去の職務執行の対価に該当するものとして、事前確定届出給与に該当しないと調査官に指摘された事例を紹介します。

事前確定届出給与とは

事前確定届出給与とは、株主総会等の決議により役員の職務につき所定の時期に確定した額の金銭又は確定した数の株式若しくは新株予約権若しくは確定した額の金銭債権に係る法人税法第54条第1項(譲渡制限付株式を対価とする費用の帰属事業年度の特例)に規定する特定譲渡制限付株式若しくは同法第54条の2第1項(新株予約権を対価とする費用の帰属事業年度の特例等)に規定する特定新株予約権を交付する旨の定めに基づき支給する給与のうち一定の要件を満たすものをいいます。

一定の要件とは支給する資産の内容により異なりますが、金銭の支給の場合、以下のいずれか早い日までに事前確定届出給与の届出書を提出することが必要とされています。

 (a)株主総会等の決議決議をした日から1月を経過する日
 (b)職務執行開始日から1月を経過する日
 (c)その会計期間開始の日から4月を経過する日

業績賞与との関係

事前確定届出給与は役員の将来の職務執行期間に係る報酬であることが前提とされており、過去の職務執行の対価である業績賞与や決算賞与は事前確定届出給与に該当しないこととなります。

また、民法上委任の報酬は後払いが原則とされていることを考えると、将来の職務執行期間の対価である報酬の前払いをする処理は適切ではないとして、期首から間もない時期に届出書を提出して支払われる賞与は過去の職務執行期間に係る業績賞与に該当するのではないかと考える向きもありますが、「所定の時期」については、使用人への賞与を毎期継続して同時期に支給している場合、その支給時期に合わせて役員賞与を支給することが認められています。

役員賞与引当金の取り崩しによる支給について

会計処理との関係でいえば、引当金はその計上根拠である「その発生が当期以前の事象に起因し」という要件があり、期末決算により役員賞与引当金を計上することは、当期以前の業績に基づき、役員の過去職務執行期間に係る報酬を見積り計算していると考えられます。

そのため、期末に計上した賞与の計算方法の詳細を調査官に確認され、過去の勤務期間や業績等に基づき引当金が計上されている場合は、業績賞与の支給をしているものとして、事前確定届出給与の否認をされることがあります。

事前確定届出給与が業績賞与と取り扱われないための留意点

ただし、役員の将来の職務執行期間に係る報酬については、少なからず過去の業績を参考にして決めることが一般的であり、報酬を決定するための指針として過去の業績を参照しないことは経営の実務上不可能です。

税務調査官も過去の業績を参照しているから即座に否認することは難しいため、税務調査に備える方法としては、将来の職務執行期間の対価であることを株主総会議事録等で明確にしておき、過去の職務執行期間の対価であることをうかがわせる文言を使用しないことが重要となります。また、中小企業の場合、役員賞与引当金はできる限り期末に計上しないことをお勧めします。

*上記は当事務所の個人的見解・意見を述べるものであり、税務当局が税務調査において同じ結論に達することを保証するものではありませんのでご留意ください。

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